顔が見えない(2)
パチンコ店における機械台データによって、どの機種がどの程度稼動し、どの程度売上げ、どの程度粗利があるのかを知ることが出来ます。これはある意味、他業種における購買傾向を把握することと同じです。
これに加え、自店舗の顧客層の構成と傾向を知ることが、顧客全体の特性を把握する事になります。
顧客全体の特性を把握し活用することで、営業のアプローチが多様となり、営業力を強化していくことが可能となるわけです。
しかし、これで顧客の顔全てがわかる、というわけではありません。
もうひとつ重要なものに、顧客個々の特性というものがあります。これは顧客個人の属性と活動傾向のことを言います。
詳細は省きますが、実はこの顧客個々の特性というものはパチンコ店にとっては曲者で、これを把握し管理・活用することは非常に難しいといえます。仮に活用したとしてもその効果にはデメリットを伴う危険すらあるのです。
理想から言えば、この2種類の特性を把握して営業を行うことが望ましいのですが、パチンコ店においては、情報収集の難易度とその活用度及び効果から考えても、通常は顧客全体の特性の把握と活用に重点を置く方ことが賢明でしょう。
ところが、そうは言っても顧客個々の特性を切って捨てるわけにはいかない場合も充分考えられます。顧客個々の特性を把握しなかったことによる損失というものも決してないとは言えないからです。
近年のパチンコ業界において、競争の激化および店舗の大型化が顕著になっている状況下、とくにスケールメリットの受けられない小型店舗などにおいては、顧客個々の特性を把握することに力を入れる事によって、顧客の流動化を防ぐ必要は出てくるかもしれません。
パチンコ店でなくとも、顧客個々の特性を把握せずに損失を出してしまうことは、例えばコンビニエンス・ストアでも充分起こり得ることです。
私はコーヒーが好きで、缶コーヒーを日に最低5本は飲みます。ご存知の通りコーヒーやタバコの様な嗜好品は、その人個人にとって重要であり、毎日繰り返し消費しますし、更にはどのコーヒーを飲むのか、どのタバコを吸うのかと、その細かい種類も決まっています。私もご多分にもれず同じA社のAというコーヒーを飲み続けているわけです。
ところがある日、私がいつも通っていたコンビニではこのコーヒーがなくなっていました。あまりメジャーでないAというコーヒーでしたから、このコンビニのコーヒーの販売状況からすれば、「売れない商品」だったのでしょう。
もちろん、この「売れない商品」という事実をはじき出したデータはPOSによるものです。このPOSが顧客全体の特性のひとつである購買傾向を導き出したわけです。
コンビニエンスストアというシステムからすれば、極めて合理的な判断でしょう。売れない商品を外し、売れ筋商品に力を入れることは、経営上当たり前のことです。この判断が、店舗の営業力を強化していくのです。
ところがこのコンビニエンス・ストアでは、ある種の損失がおきます。
もうお気づきですね。私は、このコンビにではなく、別のコンビニでAというコーヒーを買うようになったのです。
10年以上前であれば私も、お目当てのコーヒーがなくなっていたとしたら、渋々その店で違うコーヒーを選んでいたかもしれません。ところが競合店同士の競争が激化した現在、コンビニエンス・ストアはその店でなくとも近くにいくつもあるのです。私はお目当てのコーヒーを求めて、違うコンビニへと通うようになります。
私は1日5本そのコーヒーを飲んでいましたから、120円×5本×30日で、1ヶ月1万8千円の損失でしょうか?
もちろん違います。
私はコンビニへ行って、ただコーヒーを毎日5本買って帰るだけではありません。他にも弁当や雑誌などを一緒に買いますし、たまにビールやお菓子を買う事だってあるのです。
私がコンビニに費やす金額が1日に2千円であれば、月に6万円の損出になります。仮に私の他にAというコーヒーを 飲んでいる人が3人いれば、どの程度の損出になるでしょうか。
これは単なる一例であって、実際の営業ではこの様な損出の繰り返しと積み重ねになりますから、購買傾向だけによって判断する損失の積み重ねは、場合によっては非常に大きくなる可能性があるのです。
多くのケースおいては、顧客全体の特性を個々の特性よりも優先させることが有益です。パチンコ店の運営においても、通常はマス視点から見た顧客全体の特性の把握に重点を置く事になるでしょう。
しかしながら、激化する競争の中を生き抜いていくためには、パチンコ店においても顧客個々の特性を考慮した営業を行う必要の出てくる店舗もあるかもしれませんね。
いずれにせよパチンコ店においては、全体・個々に関わらず顧客特性を把握することが、現時点では容易ではありません。パチンコ店のPOSは一般景品の商品管理には役立ちますが、一般景品が欲しいがためにパチンコをする人は非常に少ないはずです。会員データや貯玉管理データも、顧客特性を把握するにはデータとして不十分です。
あなたのお店のお客様がどの様なお客様なのか、それを出来るだけ知り得るような仕組みづくりを構築してみましょう。
2004年4月23日