顔が見えない(1)
このコラムにおいて今まで、思考稼動型発想の必要性を述べてきたわけですが、ホール経営者の方々をはじめ、実際にホール運営に携わる店長さんや主任さんとお話しても、なかなかこのような考え方が出来ないのが現実です。
どうしても日常の実務に追われる立場になると、自分の手元から物事を考えざるを得ない状況に追い込まれてしまいます。
ましてや店長さんや主任さんは、実際の実務が優秀であったがゆえに、今の立場でホールを管理しているわけです。思考停止型発想というものは、既にお話したとおり、実務経験が豊富であればあるほど、また優秀であればあるほど逆に陥りやすい性質を持っていますから、その様な思考停止型発想からなかなか抜け出せないのも、わからなくはありません。
ところが実際のホール運営を管理する方々の実務そのものに、偏りがあることも目に付きます。このことも、思考停止型発想の原因となっているのかもしれません。
実務そのものに偏りがあるというのは、別に店長さんが部分的に手を抜いているということではありません。
実はパチンコ店のホール運営において収集されるデータには、偏りがあるのです。データが取りづらい、と言い直しても良いかもしれません。
「データが偏っている?データが取りづらい?うちの店のホールコンピュータは、きちんとデータを正確に出してくれるよ。」
そう思われる方もいるかとは思います。確かにパチンコ店ではコンピュータによりデータが取られ、それによってホールは管理され、営業が組み立てられているはずです。
しかし、その様なデータは機械データであり、極論すればそのほとんどが出玉管理となるわけです。そこからは、機械データからのホール営業しか見えてきません。
つまり、お客様の顔が見えてこないということです。
もちろん機械データは重要で、それなしに有効なホール営業を行うということは、非常に困難です。
しかしながら、パチンコ店とはサービス業としての顔を持っていることは周知の通りで、お客様相手の商売です。決して機械を相手に商売を行っているわけではありません。機械のことを良く知ると同時に、お客様のことも良く知らなければならないのです。
ところがパチンコ店の場合、機械データは正確緻密に知ることは出来ても、顧客の性質を知ることは非常に難しいのです。
○○という機種がどの程度の稼動や売上げがあって、どのような動きをしたのかということは機械データで充分にわかるのですが、実際その機種にはどの様な顧客が座り、どの様にして遊戯したかということはわかりません。
例えば、遊技台AとBに関して、その日ほぼ同じ様なデータを示していても、AはBに比べ1日の顧客の入れ替わりが多く、しかも女性の割合が非常に多い、ということは機械データからはわからないのです。
顧客特性を把握するためのシステムは、実際にあることはあります。POSや会員システム、また貯玉システムも活用できるかもしれません。
しかしパチンコ店の運営において、それでは不十分であり、実際にPOSや会員システムによって取れるデータは、現実のホールの顧客の実態とはかけ離れています。
実は既にこの事に気がついている方々は沢山います。しかしながらその顧客特性の把握の難しさには、みな頭を悩ませながら工夫を続けている様子です。
ところがやっかいな事に、実はお店が知っておくべき顧客特性というものは、大きく分けて2種類あるのです。
ひとつはお店から見た顧客全体の特性であり、もうひとつは個々の顧客特性になります。
次回のコラムでは、これらについてもう少し深くお話したいと思います。
2004年4月16日