連動しない営業とコスト
競争が激しくなると収益性は悪化します。ご存知の通り、その最も大きな要因は、価格競争による利益率低下と品質競争によるコスト増加のふたつです。
隣のお店が自分のお店よりも高い割数で営業していれば、自然と顧客はそちらに流れてしまいますから、自分のお店も負けないように割数を上げて営業する事になります。これによって利益率は低下します。
他店との競争に勝ち残るため、魅力ある新機種投入台数の増加や設備の改善、接客力のUPを狙った従業員教育等、ホール運営にかかる費用は増加します。
この利益率の低下とコストの増加が、ホール運営の収益率低下の大きな原因となっているわけです。
ところがホール経営者は、どのような状況に置かれてもホール運営を続けなければなりません。ホール運営における必要経費を算出し、それを大前提として年間の売上目標と粗利益の目標を決め、さらには月間目標が定められます。そして店長をはじめとするホール担当者は、それに基づいて営業を組み立てていくわけです。
でもちょっと待ってください。本当にその計画、その営業の組み立て方で良いのでしょうか?
確かに競争が激しくなったため、利益率は低下しました。競争が激しくなったため、コストも増加しました。さらには利益率が低下した分、売上げを増加させる事によって利益金額を確保する必要が出てくるかもしれません。売上げを増加させるためのコストもさらに増加します。
しかしながら、現在の売上げや粗利益を確保するためのコストが、本当にその金額で正しいのか検証はしたのでしょうか?
実は競争の激化によって生じる変化は、利益率の低下とコストの増加だけではありません。その他にも様々な変化が生じます。
例えば顧客の消費動向と反応率の変化です。
市場の状況が変われば、顧客そのものの特質が変化します。今までは「出ると評判だった店」に頻繁に通っていたAさんも、どの店舗も似たような出玉であると感じるようになれば、別の要因で店舗を選ぶことになります。ラッキーナンバー制の店舗の「無制限タイム」も、無制限の店舗が近隣に増えてしまえば、今まで通りに顧客は反応してくれません。「本日○○デー」という触れ込みも、どの店でも同じ様なことをやっていれば、それが自分の店舗を顧客が選択する決定要因にはならなくなります。
つまり以前と違って費用対効果そのものが変わってきているのです。以前では資金と労力の投入に比例して効果があったものが、一定の資金投入額を超えると極端に効果がなくなってしまうものもあります。
この事をきちんと認識していないと、実質的には効果が薄くなってしまったものでも過大評価して高いコストを負担し続けていたり、また効果が大きいはずのものを見過ごしてしまう場合があるのです。
私は以前から「営業の効率化」ということを言っています。簡単に言ってしまえば、経営資源を戦略的に適切な部分に適切な量を投入するということです。
笑えない話ですが、例えば月2000万円の粗利が最低限必要と言っている店舗でも、その店舗がおかれている経営環境から実際の営業効果を考えて営業を組み立てていくと、年間経費が1000万円以上浮いてしまうことがあります。そしてさらに営業の効率化を進めていくと、合計年間2000万円の効果が現れるケースがあります。もちろん売上げも全店割数も同じ状態でのお話です。
現在の状態をきちんと検証せずに、今までの経験知だけに頼って計画を立てるような「思考停止型」の営業を続けていると、実際に使用している費用の内容と営業の効果が一致しなくなってしまいます。気が付くかないうちに、使用するコストと実際の営業効果が連動せずにバラバラとなり、収益の悪化の一要因になってしまっているのです。
しかしながら戦略的に営業を考え効率化を図ると、結果として逆に収益性がUPすることもあります。
あなたのお店でも、予想しているコストの中身と実際の営業の効果がきちんとリンクしているかどうか、一度見直してみてはどうでしょうか?
2004年5月28日