コラム:パチンコ店経営を考えるポイント

マーケティングの変化(3)

顧客維持型のマーケティングでは、顧客個々の特性を把握し、それを活用することによって顧客との関係を深めます。どの様に活用するかと言えば、

(1)顧客1人1人のニーズに対応する
(2)顧客を平等に扱わない

ということになります。以下にもう少し詳しく見ていきましょう。

まず(1)ですが、店側が顧客個々の特性を把握してコミュニケーションを顧客にとれば、比較的容易に顧客1人1人のニーズを掴むことが出来ます。これによって、顧客個人のニーズにあわせた提案や情報の提供を行なうことが可能になります。

例えばAさんの購入履歴を知っていれば、適切なタイミングで、

「A様、○○の方は大丈夫ですか?そろそろ買い替え時かと思いましたが。」

とアプローチをすることができます。これによって、Aさんが他店でこの商品を購入してしまうことを防ぐことが可能になりますね。

また、Aさんの顧客特性を知っていれば、店側はAさんに対し、Aさんの特性に合わせた適切なアドバイスや有益な情報をいつも与えることができますね。Aさんにとってみればこの様な行為は、非常に便利で有益なものです。店側は顧客に利便性を与える事によって、顧客から信頼を得、顧客が自分の店を選択してくれる可能性を大きく広げるのです。

さらにはこの信頼性に基づいて

「○○の商品をご利用の方は、◎◎も合わせてお買い求めになるケースが多いですね。そうすると△△という利点がさらに・・・・・」

と提案することが出来れば、他の商品の購入を実現させることも可能となるわけです。

この様にお店が顧客個々のニーズに対応して顧客とコミュニケーションをとっていく事が、他店への顧客流出を抑え、自店舗を最大限に利用してもらえる要因となるわけですね。

「どうせ同じ商品を買うならあの店で買おう。」

顧客維持型マーケティングでは、「顧客1人1人のニーズに対応する」ことによって、この様に思ってもらうことが必要になってくるわけです。

ところが一方で、顧客維持型のマーケティングには(2)の「顧客を平等に扱わない」ということも同時に必要となります。

このことは顧客を維持するという考え方から、一見矛盾したように思えます。顧客を平等に扱わないということは、顧客に対して失礼で、逆に売上げが減ってしまいそうですね。

しかしこの「顧客を平等に扱わない」ということは「顧客を公平に扱う」ということと同一なのです。

実はどの様な会社経営においても「パレートの法則」というものが働いています。

パレートの法則とは、物事は不均衡の上に成り立っているということを表した法則です。つまりどの様な企業においても、売上げの80%はわずか20%の上位顧客が生み出している、という事実があるのです。具体的に出てくる数値は各店舗によって誤差がありますが、どの様なお店であっても、その売上げの大半は、お店の一部の優良顧客によって生み出されているのです。

このような事実を知ってしまうと、顧客を全て同一に扱ってしまってよいものか疑問が生じます。

顧客1人1人の企業に対する貢献度は違うのにもかかわらず、多くの利益を与える顧客と殆ど利益を与えない顧客に対する対応が全く同じというのは、逆に言えば不公平です。多くの利益を企業に与える優良顧客からしてみれば、他の顧客と自分が全く同じ待遇ということは、顧客の満足度を満たすことは出来ません。

また企業側からしても、わずかの比率しか利益を与えない大半の顧客が他社へ流出するよりも、利益の大半を担う少数の顧客が流出した方が致命的です。

顧客維持型のマーケティングではこのような観点から、自店舗の利益に貢献する度合いにあわせて顧客に対する対応を変化させるということが重要になります。企業の利益に貢献する度合いによって、企業側もそのサービス等の対応のレベルを変えることは、顧客にとって「公平」に扱われていることになります。

これは購買頻度や購買金額の少ない顧客を適当に扱ってよいということではありません。顧客個人の企業に対する貢献度によって、それに見合ったサービスや対応を個別に行なっていくということです。企業の限られた資源を顧客の利用頻度と購入額によって有効に配分する事が必要です。

この様な手法は古くから行なわれており、例えば宝飾店などは私の様な者が来店してもごく一般的な対応ですが、得意客の場合は奥のVIPルームに通されます。VIPルームでは飲み物が出され、数人の従業員が付いて要望された商品をその部屋まで運んできます。

某百貨店でも顧客を10段階以上の階層に分けて対応やサービスを規定しているそうです。

また、最近では通信販売等にもこの手法は利用され、年間規定以上のお買い物をした顧客には優待券などが送られてくるなど、優遇措置がとられています。

これによって、同一の店舗を利用すれば利用するほど顧客にはメリットが増えることになり、企業からすれば自店舗に多くの利益をもたらす顧客の流出を防ぐ事になります。

さて、以上3回に渡ってマーケティングの変化を見てきました。パチンコ業界のお話から一度離れる形で説明していきましたので、ここでお話した手法がそのままパチンコホールの運営にも当てはめて活用できるとは思わないようにしてください。

しかしながら今後、機会を見てパチンコホール運営におけるターゲットマーケティングと顧客維持型マーケティングについて触れていく事になりますので、このお話を覚えていてもらえると幸いです。

2004年5月21日

ホール運営研究会
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