新店さんいらっしゃい(2)
あなたのお店では、イベントや新台入替などの営業活動が、一体何のために行なわれているか把握しているでしょうか?
売上げを上げるためですか?
以前もお話したと思いますが、現代は「売ろう売ろう」と思っても売れない時代です。単純に売上げを上げたいと思っても売上げは上がりません。
何のために誰に向かってどの様な営業活動を行なうのか、ということを明確に意識し実行できなければならないのです。
新店舗の出現を迎え撃つ既存店の対抗策にしても同じです。「新店に負けるな!負けるな!」と闇雲に声を荒げても仕方がないのです。
前回のコラムでお話したように、新店舗はその地域の一番店となるように、あらかじめ競争上で優位な要因をいくつも抱えて登場します。ですからそれを迎え撃つ既存店は、新店と同じ土俵で相撲を取ることは避けなければなりません。
新店舗の出現によって今後どの様に環境が変化するかを予測し、自店舗はどの様な方針を採るべきかを明確にする必要があります。さらには目的や状況にあわせた営業を使い分けなければなりません。
実際に新店舗を迎え撃つ既存店が行なうべき方策の要点は、大きく分けて
(1)新店舗と自店舗の目的の違いを把握して対処する
(2)自店舗のポジションを理解して行動する
の二つになります。
例えば(1)の「新店舗と自店舗の目的の違い」という、たった一点を認識するだけでも、営業は大きく変わってきます。
新店舗は、もちろんその地域に新しく出来るお店ですから、既存のお客様は1人もいないといってよいでしょう。しかも市場は拡大しない状況下ですから、その地域の既存店の顧客を奪うことで、新店の経営は成立します。新店舗にとって、開店後の最も大きな目的は他店の顧客を奪うこと、つまり、新規顧客の獲得になります。
それに対して既存店である自店舗は、新規店舗に顧客を奪われてはいけません。自店舗からの顧客流出を防がなければならないのです。つまり既存店舗の最も大きな目的は、顧客流出の防止ということになります。
既存店にとってその最も大きな目的が、顧客流出を防ぐことであると理解できていれば、何も新店舗と同じ土俵の上で争う必要はありません。それに合わせた営業を実行していけば良い事になります。
ではその対策を有効に機能させるには、どうしたらよいでしょうか?
既存店は、新規店舗が開店する以前、つまり新店舗が新たにできるという確定情報を得た時点から、その対策を行なわれなければなりません。何の防止策もとらずに流出してしまった顧客を、もう一度顧客として引き戻すには、相当な資金と労力が必要となるからですね。
ましてや相手は、競争上優位に立つ新店舗です。投入した資金と労力に対する見返りは、決して大きいとは言えません。
仮に、新店舗が開店してから「うちのお店は○○より出ますよー。親切ですよー。サービス抜群ですよー。」と既存店が叫んだところで、一体どれだけ顧客の胸に響くでしょうか。その店がどの様なものなのかを身体で知っているのは、何を隠そうその店の顧客なのです。
つまり、顧客流出の防止策は、新規店舗が開店してしまってからでは遅いのです。新規店舗が開店してもそちらに流れていかない、仮に流れてしまっても直ぐに戻ってきてくれる・・・という様な顧客と自店舗との関係を築くのは、新店舗のオープン以前からはじめられなければなりません。
事前に策を講じる事によって極力顧客の流出を防ぐ事が、新店舗の出現における被害を最大限に縮小させる事になります。
もちろんこれはほんの概略であり、序盤戦にしか過ぎません。主戦場となるのは新店がオープンしてからになりますから、様々な視点からその後のポジションを把握して営業していく、ということが必要になります。
残念ながらこれ以上の説明は非常に複雑となり、また多くの予備知識が必要となるため、ここでは割愛させていただきますが、しかしたったこれだけのことを認識しているかいないかで、大きく営業が変わることがわかっていただけると思います。
この様に、問題点から方針を導き出す考え方と、目的に合わせた営業を行うノウハウと実行力が、新店舗の出現による打撃を最大限に抑える対抗策となるのです。
以前の様に、営業内容まで深く考えずとも、闇雲に
「売上げ!売上げ!」
「稼働率!稼働率!」
「粗利!粗利!」
と言うだけで営業を続けていられた時代では、もうありません。
これからの時代、目的や効力に見合った営業を使い分けるノウハウと実行力が、すなわち各店舗の営業力の違いとなっていきます。
現在自分のお店で行われている営業というものが、一体何の目的で、どの様な効力を狙って行なわれているのか、一度見つめなおしてみてはいかがでしょうか?
2004年6月11日