多店舗展開の留意点(1)
事業経営の拡大を考える場合、サービス業においては、店舗数を増やしていくということが、自社の拡大に繋がります。
その様な多店舗展開は、大きく分けて2種類あります。業績に応じて、徐々に徐々に店舗を増やしていく場合と、急激に多店舗に展開していく場合です。
前者においては、それほど自分の属する市場の成長曲線をそれ程気にする必要はありません。
確かに市場の動向は重要ですが、あくまで自社の成長に合わせた上での店舗展開なのです。市場が衰退している際に、その業界の企業が成長するという事はまずあり得ませんし、仮にあったとすれば、それは市場の成長曲線に関係なく、自社が拡大するだけの競争力があるという事です。
留意すべきは、あくまで自社の成長に見合った展開なのかどうかが中心となります。
ところが後者になると、事情は変わってきます。これについて、少し考えてみましょう。
急激に多店舗展開するのは、どの業界でも行われている事です。パチンコホールだけでなく、飲食店や衣料店など、サービス業ではよく見かける光景です。
なぜ、急激に店舗を展開していくのかと言うと、市場の優位性を確保するためです。市場において大きなシェアを保持する事で、勝ち残ろうとする戦略なんですね。
早い者勝ち・・・とは言い過ぎかもしれませんが、この多店舗戦略による展開は、早ければ早いほど、市場のシェアを獲得する事が容易になります。
だって、店舗数を増やしている会社は、自分の会社だけとは限らないのですから。
一旦確保した自分のシェアを他社が奪うのは、並々ならない資金とノウハウと努力が必要になります。ですから、はやく大きなシェアを手に入れることは、ライバルを寄せ付けない力を蓄える事になるのです。
この様な戦略を用いる企業は、大きな資金を次から次へと用意できなければなりません。
そしてこの場合の資金は、株式上場でもしていない限り、そのほとんどは債務として調達されます。端的に言えば、借り入れのことです。
さて、ここで考えなければならないことがあります。
借入金とは、いつかは必ず返さなければならないお金のことで、さらにはそこに利子というものがつきます。
この返済を見込んで、企業は資金を運用する必要が出てくるわけです。
店舗を増やせば、その分売上げは増加します。そして利益もそれに伴って増加するはずです。
この増加分が、借り入れの元金と利子を上回るかどうかが、多店舗展開のひとつの大きな基準となるわけです。
ところが、これが単純には行きません。
まず第一点は、展開した店舗の各店舗が全て、必ず上手くいくとは限らないという事です。
店舗が1店舗増えれば、その分売上げは確実に増加します。ところが、その売上増加は、実質的な業績に比例しているわけではありません。
経営には損益分岐点というものがあります。1店舗増えて売上げが増加したからといって、その店舗の売上げがその店舗の損益分岐点を越えているかどうかはまた別の話です。また、一時的には超えたとしても、それが借り入れの元金プラス利子分をまかなうだけの儲けを維持し続けられるとは限らないのです。
多店舗展開を急激に進める戦略を持った企業は、1店舗の出店の失敗を埋めるために、さらに次の店舗を増やすという性質を自然と帯びてきます。
この辺りを、きちんと計算に入れて計画を立てなければなりません。この点を考慮しなければ、気がつくと「損」を埋めるために新たな出店を繰り返すという悪循環に陥ることになるわけですから・・・
けれども、多店舗展開には、まだまだ留意しなければならない点があります。
(次回へ続く)
2004年10月22日