コラム:パチンコ店経営を考えるポイント

ムカデ競争(2)

ペアシートにあまりお客様が座らなくなったのも、ペアシートの設置を店舗が取りやめていったのも、決して流行が過ぎたからではありません。もちろん最初のうちは物珍しくて座るお客様もいたことでしょう。

でも本質は違います。ペアシートにお客様が座らなくなったのは、単純にお客様のニーズを満たせなかったからです。

実は、全体を考えてから具体策を考える思考稼動型で発想していれば、この事について事前に検討することが出来ました。

ところが思考停止型で発想してしまうと、全体を見ずに場当たり的に営業を考えますから、このことに気が付かずにペアシートという営業方法を導入してしまいます。

「思考停止型」では、大体こんな感じの会話で導入が検討されます。

「カップルで来たお客様に対して2人だけの席を用意したら面白いんじゃない?」
「若者やカップルを呼び込むために、ペアシートをやってみるってどうだ?」
「ペアシートってイメージアップにつながるかもな。」
「なんだか最近ペアシートが流行ってるみたいだぞ。」
「隣の駅の大型店○○がペアシート導入したそうだ。顧客もついてるみたいだし、うちの店舗もやってみるか。」

気が付きましたか?

この会話には、「お客様」について思いを馳せている部分が全くありません。全て自分の店の「利」だけを起点にしてに物事を考えています。

つまり、全く顧客のニーズを考えずに導入が検討されるのですね。(説明しやすいように意図的に上記の様な会話を挙げたわけではなく、現実この様な検討のされ方が非常に多いというのが現状です。)

「自分もパチンコを打つから顧客の気持ちを知っている」という安易な安心感が、実は落とし穴になっています。知っているつもりで実は知らない、考えたつもりで実は考えずに答えを出した・・・・つまり「思考停止型」の典型です。

では、実際にこのような過程を経てペアシートを導入した営業が始まったらどうなるでしょうか?

もちろん顧客のニーズを考えず、自分の店を基点として考え導入したのですから、営業を開始した後で顧客ニーズとのギャップに気が付きます。そうなるとペアシートと現実の営業との間で衝突が起こるわけです。

そして結果としては、 常に店の「都合」ばかりが営業に反映されます。以下に見ていきましょう。

ペアでなければ座れないので、全体から見れば稼動しない場合は1台ではなく2台とも遊技台は稼動しません。つまり稼働率が落ちるわけです。

ペアシートでの出玉のやりとりを自由にすると、1人が出てしまえば2人ともお金を使う必要がなくなります。つまり 売上げが伸びません。

店側としてはペアシートに座ってもらい稼動を上げなければならないですし、そのためには玉を出さないわけには行きません。

ところが現実のホール営業では、売上げや粗利のことも考えなければならないですよね。

ですからホールの営業をあずかる側の店長としては、ペアシートの釘調整や機種選定などに苦肉の策を取らざるを得なくなります。曖昧な釘調整になったり、開き直って締めてみたり、ペアシートのうち片方は開けて片方は締めるという方針になったり、遊技台は元々人気のない機種を使ってみたり・・・・

さらに恐ろしい事に、どの様な方針を採ろうとも、実はペアシートは片方が出て片方が出ないという印象を、顧客が勝手に持ってしまう確立が非常に高いのです。

以上からわかる様に、「思考停止型」で考えるとまず導入段階で顧客ニーズや現実の営業とのギャップを検討しませんから、導入後に現場サイドではこのギャップの衝突の狭間で悪循環となる営業を重ねていく事になるのです。

未来に対して人は常に完璧に予測することは不可能ですし、確かにやってみなければわからないという事はたくさんあります。

しかしホール運営は遊びではありませんから、予測できるものは事前に予測できるに越したことはありません。そしてきちんと予測できるものは予測し、きちんと対処してホール経営をしていくことが、無駄を省いて効率性を生み出し、収益を向上させていくのです。

ペアシートに関しては正直なところ、この程度の問題点であれば、事前に充分予測可能だったはずです。

ところが思考停止型発想では、この様な問題点に思いが及びませんでした。思考停止型の怖いところは、きちんと考え検討したつもりでも、結果として何も考えずに答えを出してしまうことと同じ結果を招いてしまうことのようです。

さて、それに対し「思考稼動型発想」でペアシートの導入を検討したとすれば、それを見送るかもしくは違う形での導入を提案してくことになったはずです。次回のコラムでは、ペアシートの導入を「思考稼動型」で検討するとどうなったかを考えてみましょう。

2004年4月2日

ホール運営研究会
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