コラム:パチンコ店経営を考えるポイント

ムカデ競争(3)

では、「思考稼動型」発想でペアシートの導入を検討するとどうなるかを見ていきましょう。

思考稼動型でお店の営業力を高めることを考えるということは、「お客様に遊技台で遊ぶ<場>をレベルの高い状態で提供すること」と発想することでしたね。つまり思考稼動型でペアシートの導入を検討するということは、

「ペアシートを導入することで、お客様にレベルの高い<場>を提供できるのだろうか?」

と考えるという事になるわけです。

つまりこれって、「まず最初に顧客ニーズを考える」ってことですよね。

不思議なことに、こう考えた途端に

「ペアシートだけでレベルの高い<場>を提供するのは簡単じゃないな。」

と理解する人が増えてきます。全体を見渡して考えた途端に、今まで見えてこなかったものが見えてくるのです。

もう少し具体的に考えて見ましょう。

レベルの高い状態でお客様に遊技台で遊ぶ<場>を提供するという事は、即ちお客様に満足していただくという事でもあります。

ではペアシートを導入すれば、お客様はより満足してもらえるのでしょうか?

まず、遊技台を2台セットにして顧客に提供しようとすると、顧客側は遊技台を選ぶ自由度が極端に低くなるだろう、という事は容易に想像つきます。各自が打ちたいと思う台が隣合わせとなる確率は非常に少ないですし、途中2人のうち一人が別な台に移りたくなっても、もう一人は自分の台が出ていれば移動したくないのは当然でしょう。

ですからペアシートに座る場合、お互いもしくはどちらか一方が妥協する事になるわけです。(実はこのようなことを現場サイドでは把握済みでなければいけません。ペアで来店する顧客の多くが、そして来店頻度の高いペアの顧客ほど、隣同士では座らないということを、ホールスタッフは知っているはずなのです。)

要するに顧客側は最初は珍しがってペアシートに座ったとしても、パチンコで遊戯する際の自由を奪われることに気が付いた時点で、ペアシートを避けるようになるだろう、という事が導入前に予想できるのです。

そうなればこの段階で方針を立てることも可能になります。

(1)導入資金を抑えて、早期導入・早期撤退
(2)ニーズに合うように別の形で営業
(3)ペアシートは導入しない

実際はもっと緻密に方針を立てるべきですが、そうでなくとも早い段階で既に上記3種類の方針を打ち出すことが可能になります。

現実にどの方針をとるかは各店舗の事情によるとは思いますが、いずれにせよ思考停止型で闇雲にペアシートを導入してしまうより、はるかに資金的にも営業的にも無理がなく効率的であることがわかると思います。

今回はさらに「販売」という視点からも思考稼動型で考えて見ましょう。「一体誰に販売するのか?」という視点で考えます。

先程、思考稼動型で考えると言うことは、「ペアシートを導入すれば、お客様はより満足してもらえるだろうか?」と考えることだとお話しました。

では、そもそもそのお客様とは誰のことでしょうか?

ペアシートの導入についてですから、この場合はもちろんペアで来店するお客様が対象になりますね。

ではペアで来店する顧客は、顧客全体から見て何割程度ですか?しかも2人で来店した顧客の中で、さらに隣同士で座ってパチンコを打ちたがる顧客は何割程度になると思いますか?

お店の顧客層によっても違いますが、大半の店舗ではその対象とする顧客数が非常に微々たるものだということを、ちょっと考えただけでも想像できますね。

そう考えたとき、本当にペアシートが自分の店舗に必要とされているのかされていないのかがわかります。

実はこれ、自分のお店がどんな顧客を対象とするか(ターゲットと言います)をあらかじめ明確にして営業していると、深く考えずとも気が付くお話です。

1人でぶらっと立ち寄る顧客が大半の立ち食いそば屋さんに、カップルの顧客しか食べることの出来ないスペースがあったとしたら、どう思いますか?家族連ればかりで賑わうデパートのレストランに、2人組みでしか座れない席があったとしたら、あなたはどう思いますか?

八方美人は時として違和感や無駄を生み出してしまうものなのですね。

あなたのお店の営業力を高めようと考えるとき、思考停止型で考えていると、常に場当たり的な営業戦術しか出来なくなります。場当たり的な戦術は、無駄や非効率を生み出してしまいます。

効率的に、そして効果的にホール運営を行うには、思考稼動型発想によって全体を見渡し、戦略から具体的な戦術に落とし込むことが必要なのです。

ムカデ競争に参加する中のたった一人だけに、「ゴールはあそこだ!」と伝えることはもう止めにしましょう。ムカデ競争に勝つには、参加する全員にこの競技がムカデ競争であることを伝え、みんなで足並みをそろえて向かうべきゴールに進まなければならないのですから。

2004年4月9日

ホール運営研究会
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