コラム:パチンコ店経営を考えるポイント

マーケティングの変化(2)

業界で本格的な競争が起きている時は、常に消費者に選択権があります。そしてニーズが多様化している時代では、単に売ろう売ろうと思っても売れません。

そこで年代やライフスタイルなどで市場を分けて考え、その細分化した市場にあわせた商品を開発したり、販売促進を行なうことが必要になります。ターゲットを明確にしてビジネスを展開する事により、市場シェアの奪い合いという競争の中で勝ち残ろうとする企業活動をターゲット・マーケティングと呼びます。

ところが成熟化社会が進み、 テレビや車も1人に1台が珍しくない位に物が消費者全体に行き渡ってくると、さらに物が売れない時代がやってきます。

しかも消費社会で暮らす消費者は、どんどんと賢くなっています。安いからだとか、新製品だからとか、その様な単純な理由で消費者は物を買わなくなり、今までの企業側のアプローチにも消費者は反応しなくなっていきます。

この様な時代になると、新規顧客の獲得には非常に難しくなります。そして新規顧客を獲得するには非常に高いコストがかかってくるようになります。反応しづらくなった顧客を反応させようとするのですから当然です。新規顧客を獲得するコストは、一説では既存客を維持するためのコストの5倍とも7倍とも言われています。

そこで必要になってくるのが、「既存顧客を維持する」という考え方です。新規顧客を獲得して市場シェアの増加を狙うのではなく、顧客シェアの増加を狙うという発想です。

顧客シェアの増加とは、顧客一人一人に対して自分の会社を利用する頻度を高めるということです。例えばAさんが毎日飲む缶コーヒーはどこの店で買っても同じ缶コーヒーですが、B店はAさんに出来るだけ自分の店で缶コーヒーを買ってもらうことで売上げを上げることが可能です。Aさんが缶コーヒーを買う場合、従来はB店30%、C店20%、D店30%、その他20%の割合で店を利用していたならば、それをB店100%に出来るだけ近づけようとすることによって売上げを上げるのですね。

この様な顧客維持型マーケティングは、新規顧客獲得に重点を置くよりも、コスト及び効果の面で有益に働きます。

この手法で最も代表的なのが、ポイントカードですね。

「同じ商品を買うならポイントを貯めているあの店へ」

これによって自分の店の利用頻度を高めることが比較的容易に行なえるわけです。

ところが、顧客維持型のマーケティングがこれで完成するわけではありません。なぜなら、ポイントカードなどの仕組みだけでは、ポイントカードの清算と同時に違う店に行ってしまうかもしれないからです。他店でも同じ様にポイントカードを扱っていますからね。

それ以外にも顧客を維持する仕組みが必要です。

(話の途中ですが、ここでひとつ注意してください。前回からお話しているこの「マーケティングの変化」ではパチンコホールの運営のお話から一度離れた形でお話しています。この顧客維持型マーケティングをどこまで実際のホール運営で活用すべきかどうかは、非常に注意が必要です。これについては後日機会を見てお話しする事にしますので、ここではパチンコ業界とは切り離してお話を聞いてください。)

顧客維持型のマーケティングではLTV(顧客生涯価値)の最大化を重視しています。つまり一時的にではなく、顧客一人一人が一生に渡って自分の会社の商品、自分の会社のお店を利用してくれるように活動するということです。Aさんが一生に2万本の缶コーヒーを飲むのであれば、その2万本を最大限に自分のお店で買ってもらえるように考えます。

これを実現するために、どの様な仕組みを作ればよいのでしょうか?

企業は物やサービスを提供し、顧客は企業から受ける物やサービスの提供に対してお金を払うという「関係」で結ばれています。企業からすれば新規顧客の獲得とは、要するにこの「関係」のはじまりです。

そしてこの関係を生涯にわたって維持していくためには、この両者の結びつきをより強めるということが必要になるのです。

では企業としては、顧客との関係をより強くしていくためにどうしたら良いでしょうか?

これにはまず「顧客個々の特性」を把握することが必要になります。(これは以前「顔が見えない(2)」でお話しましたね。覚えてますか?)相手のことを何も知らずに関係が深まるはずがありません。

そしてこの顧客個々の特性を活用していく事になります。具体的には簡潔に分けて2種類です。

・顧客1人1人のニーズに合わせて対応する
・顧客を平等に扱わない

ああ、でもこれを言うと

前者はわかるけど、後者の「顧客を平等に扱わない」の意味がわからない。
お客様は平等だろ?
そんなことをしたら逆に売上げが減ってしまうだろ?

なんて声が聞こえてきそうです。さあ、果たしてどうなんでしょうか・・・・・

(続く)

2004年5月14日

ホール運営研究会
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