マーケティングとの狭間で
マーケティングには様々な考え方や手法があるのですが、一般的に有効な手段として、以下の流れを踏まえておく必要があります。
見込み客→既存客→固定客
これは営業活動において企業側が認識しなければならないお客様の区別とその流れです。
もう少し説明します。
「見込み客」とは、その会社の商品を一度も利用したことのないけれども、利用してくれる可能性のある人たちのことです。
「既存客」とは、既にその会社の商品を利用したことのある人たちです。
「固定客」とは、その商品を利用する場合は別の会社を利用せず、ほぼその会社しか利用しない人、つまりお得意さんという人たちのことです。
(※ただし店舗運営の場合は、「既存客」よりも「浮動客(自店・他店ともに利用する人たち)」として捉えたりと、多少の違いはあります。)
まずは「集客」という手段によって見込み客を集める活動を行い、彼らに既存客となってもらいます。そしてこの既存客に繰り返し利用してもらうための活動を行なうことで、彼らを固定客化していくのです。
こう簡単に書いてしまうと、当たり前のことの様に思ってしまう人もいるでしょう。確かにこの流れは、企業の営業活動として当たり前の事かもしれません。
しかしこれは、単純化して説明するから当然に思えるわけで、実際の営業がこの流れをきちんと意識して組み立てられている会社は、そう多くありません。この様な流れを意識して捉え、営業の仕組みを上手く作り上げて利用すると、非常に効率的に営業を行なうことが可能になります。
しかもこの顧客の流れを作る活動を行なえば行なうほど、顧客はその会社への信頼度を高める事になりますから、顧客維持型マーケティングにもつながっていきます。(顧客維持型マーケティングについては「マーケティングの変化(3)」を参照してください。)
そして固定客をその会社の「ファン」にまで高めてしまうと、数年前に注目された「クチコミ」という効果を得ることにもつながっていくのです。クチコミによってお客様が勝手に他のお客様を連れてきてくれるのですから、会社が新規のお客様を獲得する(つまり、集客によって見込み客を集めて既存客を獲得する)という労力も費用も必要なく、売上げが上がるという仕組みですね。
この様に企業が行なう営業活動においては、しっかりと上記の流れを踏まえたうえで方針を立て実行していく必要があるのです。
ところがこの考え方、パチンコ・スロットのホール営業に限っては、どうもシックリいきません。
例えば、固定客はファンとなって口コミ効果をもたらす可能性がありますが、パチンコ店での固定客は基本的に口コミ効果を期待できません。新規顧客を連れ来る顧客は、この場合で言う固定客よりも既存客(浮動客)の方が圧倒的に多いのです。
それどころか、パチンコ店に対する悪い噂の発生源が実はそのパチンコ店に毎日通い続ける固定客だったりするわけです。(この事実が非常に多いこと、知ってましたか?)
このことは従業員教育によって接客態度を向上させるなど、サービスの質を上げれば改善される、という問題ではありません。逆にこの固定客を満足させようとすればするほど、ホール営業は悪循環となり営業力を低下させていくのです。
この様に、パチンコ・スロット店の現実と既知のマーケティングとの相違点は、次から次へと出てきます。現実のホール営業に直面し、その実情を知れば知るほど、既存のマーケティングとのズレを感じていくのです。
ここがパチンコ・スロットホール営業の難しさであり、悲しい性なのかもしれません。その様な理由から、色々と勉強してみたけれどもなかなか上手く実際のホール運営に活用できずに、さじを投げてしまった人もいるかもしれませんね。
けれども、だからといってより有効なホール営業を模索することを諦めてはいけません。経営活動とは、現在儲かっていようがいまいが、それは関係なしに、常に最良の方法を求め続けていくべきものだからです。
結局のところ、他業種の購買行動・消費行動とは違う動きをパチンコ・スロットの顧客は示します。またそれ以外にも、他の業種に見られない様々な特異性をパチンコ・スロットのホール運営は内包しています。実際にホール営業を行う立場の人間であれば、それら特異性を踏まえたうえで、現実に即した営業手法を取っていかなければなりません。
経営者をはじめ店長やスタッフは、自分の店のある地域、そして自分の店の顧客を注意深く観察しましょう。そして他の業種や他の競合店にはない、あなたのお店の特徴を見つけましょう。
それがきっと、あなたのお店にあった素晴らしい営業方法のヒントとなるはずです。
<追伸>
実際のホール営業に即した基本テキストを無料配布する事にしました。詳しくはこちらをご覧ください。
2004年7月2日